スリム型のPCやMini-ITXの小さなケースでCPUクーラーを交換しようとすると、ケースの仕様表にある「CPUクーラーの高さは○mmまで」という上限が、よく見かける塔型のクーラーよりかなり低いことがあります。以前、空冷CPUクーラー4製品の比較で取り上げた塔型は、いちばん低いNoctua NH-D12Lでも全高145mmでした。この記事では、その145mmが入らないケースに向けて、ロープロファイル(低背)のクーラーと小型のクーラーを比べます。
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145mmは、前の記事で比べた4製品の中での最小値です。塔型のクーラーがすべて145mm以上というわけではありません。この記事でも、全高110mmの小型の塔型を候補に入れています。
背の低いクーラーは、高さだけで選ぶと取り付けでつまずきやすい部品です。低く作るためにヒートシンクを横へ広げた製品では、ファンやヒートシンクがメモリーの差し込み口の上に重なりやすくなります(ソケットの周りに収まり、メモリーにかからない製品もあります)。また、メモリーを避けるためにファンを上へずらせる製品では、ずらした分だけ全高が増えます。同じシリーズでも、CPUのソケットごとに型番が分かれていることがあります。なので、ケースの許容高、ソケット、メモリーの高さを一緒に照合しながら絞っていきます。
低背の製品の多くは、ファンをマザーボードと向かい合わせに付ける「トップフロー」型です。一方で、風がマザーボードと平行に流れる「サイドフロー」の塔型にも、小さく作られた製品があります。ロープロファイルとトップフローは同じ意味ではないので、この記事では構造の名前ではなく、高さとソケットで分けて比べます。
先に結論:ケースの許容高とソケット別の候補
今回比べた6製品の中では、ケースの許容高ごとに次の製品が候補になります。
- 許容高37〜38mm:AM5ならNoctua NH-L9a-AM5、LGA1700・LGA1851ならNoctua NH-L9i-17xx(どちらも全高37mm)。AM4では、NH-L9a-AM5に別途キットを用意して取り付ける方法がNoctuaの案内にあります。LGA1200・LGA115xに合う製品は、今回の6製品にはありません
- 許容高39〜69mm:上の2製品に加えて、Scythe SHURIKEN 3(SCSK-3000)(全高39mm)。標準の金具でAM4・AM5とIntelの複数のソケットに対応します
- 許容高70mm以上:120mmファンのNoctua NH-L12S(ファンをヒートシンクの下に付けた標準の構成で70mm)
- 許容高77mm以上:Noctua NH-L12Sx77。今回比べたNoctuaの5製品の中では、Noctuaの性能の目安(NSPR)が最も高い製品です
- 許容高110mm以上:小型の塔型Noctua NH-D9L(ファン1基の標準構成で110mm)
- 許容高145mm以上:塔型4製品の比較記事の製品とも比べられます
どの帯でも、公称の全高とケースの許容高の差が数mmしかない場合は、後で説明する「許容高と全高の照合」を先に確かめてください。許容高37〜38mmのケースに、全高39mmのSHURIKEN 3は勧めません。
CPUの発熱にも注意が要ります。NoctuaはNH-L9a-AM5、NH-L9i-17xx、NH-L12Sについて、発熱の大きいCPU向けの製品ではないと注意しています。どの製品も、自分のCPUの型番でメーカーの互換情報を確かめてから選びます。
比較はメーカーの公式仕様と資料にもとづくもので、実機での取り付けや温度の測定はしていません。価格は店と時期で大きく変わるため、この記事では比べていません。また、メーカー製のPCは専用の部品を使っていることがあるので、形だけで交換できると判断せず、PCの型番でメーカーの資料を先に確かめてください。
買う前に確かめる4点
低背・小型のクーラーでは、ケースの高さ、ソケット、CPUの発熱、メモリーの高さの4つのうち、どれか一つが合わないだけで取り付けられないか、冷却が足りなくなります。順番に見ていきます。
ケースの許容高と製品の全高を照合する:ケース側の定義と、製品資料の測定範囲
ケースの仕様表には「CPUクーラー最大○mm」のように、入るクーラーの高さの上限が書かれています。この値はケースメーカーが決めたもので、どこからどこまでを測った値かは、ケースによって同じとは限りません。ケースの説明書や仕様表の注記で確かめます。
Noctuaはラックマウント型のケースについてのFAQで、ケースの外側の寸法と、中に入るクーラーの高さは別だと説明しています。ケースのフレームや電源の位置、マザーボードを浮かせて固定するスタンドオフなどによって、CPUの上に使える空間は変わります。そのうえで、CPUソケットの上に実際にある空間を製品の仕様と照合すること、CPU・マザーボード・メモリーとの互換も確かめることを案内しています。ラック型向けの説明ですが、スリム型や小型のケースでも考え方は同じです。
クーラー側の全高も、何を含めて測った値かがメーカーごとに同じとは限りません。ScytheはSHURIKEN 3の全高39mmに、ねじの突起を含むと明記しています。Noctuaの全高がどこまでを含む値かは、今回確認した資料では分かりませんでした。
なので、37mmと39mmのような数mmの差や、ケースの上限との余裕が数mmしかない場合は、数字を並べるだけで決めない方が安全です。ケースメーカーに上限の測り方を、クーラーメーカーに全高に含む範囲を確かめてから注文してください。
ソケット:標準付属の金具と、別途用意するキットで変わる対応
ソケットは、CPUをマザーボードに取り付ける台座の規格です。クーラーはソケットごとに固定する金具が違うので、自分のソケットに対応した金具が付いている型番を選びます。
CPUの名前は、Windows 11なら「設定」→「システム」→「バージョン情報」の「プロセッサ」の欄で分かります。その名前でIntelやAMDの公式サイトの製品仕様ページを探すと、「ソケット」の欄に規格が書かれています。マザーボードの仕様表でも確かめられます。
低背の製品は、ソケットごとに型番が分かれていることがあります。今回の6製品では次のとおりです。
- NH-L9a-AM5:標準で付属する金具はAM5用です。AM4では、NM-AM4-L9aL9iというマウンティングキットを別途用意すれば取り付けられるとNoctuaは案内しています。キットの入手方法と条件は、Noctuaの製品ページの案内で確かめてください。名前の似たNH-L9a-AM4は別の製品で、今回は比べていません
- NH-L9i-17xx:LGA1700・LGA1851用です。名前に「17xx」の付かない以前のNH-L9iとは別の製品です
- SHURIKEN 3、NH-L12S、NH-L12Sx77、NH-D9L:標準の金具で、AM4・AM5と、LGA1851・LGA1700・LGA1200・LGA115x系に対応しています
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Yahoo!ショッピングのボタンは型番での検索です。購入時は型番・色・セット内容を確認してください。
注文するときは、購入ページの型番と、対応ソケット・同梱の取り付け金具の記載も確かめてください。流通時期の古い在庫では、同梱の金具が現在の仕様と異なる場合があります。
CPUの発熱と、メーカーの互換情報・性能表記の読み方
同じCPUでも、マザーボードで設定されている電力の上限、重い処理をどのくらい続けるか、室温、ケース内の風の流れによって、発熱と温度は変わります。CPUの名前だけで「このクーラーなら足りる」とは決まりません。
そのうえで、低背のクーラーには、メーカーが使えるCPUについて注意を付けているものがあります。NoctuaはNH-L9a-AM5、NH-L9i-17xx、NH-L12Sについて、発熱の大きいCPU向けではないと注意しています。
Noctuaの製品なら、CPUごとの互換性の情報を自分のCPUの型番で調べると、そのクーラーでどの程度使えるかというNoctuaの見立てを確かめられます。互換情報はCPUのほか、マザーボード、メモリー、ケースについても調べられます。
NSPR(Noctua Standardised Performance Rating)は、Noctuaが自社のクーラーを比べるために作った相対的な数値です(NoctuaのNSPRの説明)。今回のNoctua 5製品では次のとおりです。
| 型番 | NSPR |
|---|---|
| NH-L9i-17xx | 59 |
| NH-L9a-AM5 | 61 |
| NH-L12S | 88 |
| NH-D9L | 88 |
| NH-L12Sx77 | 100 |
読むときの注意は3つあります。
- NSPRはNoctuaの製品同士でだけ比べられる相対的な数値で、W(ワット)などの単位を持つ値ではありません。他社の製品とは比べられないので、SHURIKEN 3とは並べていません
- Noctuaの説明では、室温22℃で、通気の良いタワー型ケースに入れた条件での値です。小さく通気の少ないケースや、室温の高い部屋では、結果が悪くなることがあります
- 互換情報で問題ないとされていても、自分の環境での温度を保証するものではありません
トップフロー型のNH-L12Sと、サイドフローの塔型のNH-D9Lは、構造が違ってもNSPRは同じ88です。構造の名前だけでは冷え方を比べられない、という例でもあります。ただ、同じ88でも、ケースや室温が違う実際の環境で同じ温度になるとは限りません。
SHURIKEN 3は、Scytheの製品ページに、どのCPUまで冷やせるかの目安(熱設計の上限やCPUごとの可否)が書かれていません。確認した時点では、資料のダウンロード欄にもデータがありませんでした。選ぶ前に確かめたい場合は、次のどちらかにします。
- Scytheの公式サイトのサポートから問い合わせ窓口へ進み、CPUとマザーボードの型番と、重い処理を長く続ける使い方かどうかを伝えて、使えるかを問い合わせる
- メーカーの見立てを注文前に資料で確かめたいなら、CPUごとの互換情報があるNoctuaの製品から選ぶ
メモリーの高さとファンの位置:全高と一緒に照合する
低背のクーラーの中には、ヒートシンクやファンがメモリーの差し込み口の上に張り出す製品があります。そこに放熱板の付いた背の高いメモリーを挿していると、ぶつかって取り付けられません。メモリーの高さは、メモリーの製品ページや仕様表で確かめます。載っていなければ、メモリーのメーカーに確かめてください。
製品ごとの条件は次のとおりです。
- NH-L9a-AM5・NH-L9i-17xx:ソケットの周りに規格で決められた、クーラーを収める範囲(keep-out zone)の内側に収まり、メモリーにかぶらないとNoctuaは説明しています。対象は、NH-L9a-AM5がAMDのソケット、NH-L9i-17xxがLGA1700・LGA1851です
- NH-L12S:ファンをヒートシンクの下に付けた標準の構成で、メモリーの高さ35mmまでが目安です。この値は取り付ける向きで変わるので、Noctuaの互換情報で確かめます。ファンを上に付けた場合の数値は、この記事では挙げていません(理由は製品の節で説明します)
- NH-L12Sx77:ヒートパイプの曲がりをI/Oパネル側に向けた標準の向きで、メモリーの高さ44mmまで。ファンを上に付け替えると56mmまで広がりますが、全高は77mmから93mmになります
- NH-D9L:一般的なIntelのマザーボードと、多くのAMDのマザーボードではメモリーにかぶりません。ただし、AMDのkeep-out zoneを満たしていない一部のマザーボードでは、メモリーの高さ30mm以下が条件になります。ファンを追加した場合の条件は、製品の節で説明します
- SHURIKEN 3:メモリーの高さの上限は、Scytheの製品ページに書かれていません。クーラーの幅は92mm、ファンを含む奥行きは94.4mmです。ぶつからないかは、メモリーとマザーボードの型番を添えてScytheへ問い合わせて確かめてください
NH-L12SやNH-L12Sx77のように、メモリーを避けるためにファンを上へずらせる製品では、ずらした分だけ全高が増えます。メモリーの高さは、ケースの許容高と必ずセットで照合します。
比較表:全高・ソケット・メモリー・CPUの発熱の条件
全高はメーカーの公称値で、何を含めて測ったかはメーカーごとに同じとは限りません。各欄の詳しい条件は、型番のリンク先の製品の節に書いています。
| 型番 | 全高(標準構成) | 対応ソケット(標準付属の金具) | メモリーとの干渉 | CPUの発熱について確かめること |
|---|---|---|---|---|
| Noctua NH-L9a-AM5 購入先 | 37mm | AM5(AM4は別途キットを用意) | AMDのソケットではかぶらない(メーカー記載) | 高発熱CPU向けではないと注意あり。互換情報で確認 |
| Noctua NH-L9i-17xx 購入先 | 37mm | LGA1700・LGA1851 | LGA1700・LGA1851ではかぶらない(メーカー記載) | 高発熱CPU向けではないと注意あり。互換情報で確認 |
| Scythe SHURIKEN 3(SCSK-3000) 購入先 | 39mm(ねじの突起を含む) | AM4・AM5、LGA1851・1700・1200・115X | 公式に記載なし(問い合わせで確認) | 公式に記載なし(問い合わせで確認) |
| Noctua NH-L12S 購入先 | 70mm(ファン下) | AM4・AM5、LGA1851・1700・1200・115x | ファン下で35mmまで(向きで変わる) | 高発熱CPU向けではないと注意あり。互換情報で確認 |
| Noctua NH-L12Sx77 購入先 | 77mm(ファン上で93mm) | AM4・AM5、LGA1851・1700・1200・115x | 44mmまで(標準の向き。ファン上で56mm) | 互換情報で確認 |
| Noctua NH-D9L 購入先 | 110mm(ファン1基の標準構成) | AM4・AM5、LGA1851・1700・1200・115x | 多くの環境でかぶらない。一部のAMDマザーボードでは30mm以下 | 互換情報で確認 |
許容高が70mm未満のケース:全高37mmの2製品と39mmの1製品
許容高が70mmに届かない場合、今回の6製品で候補になるのは、92mmファンを使う次の3製品です。37mmの2製品はNoctua、39mmの1製品はScytheです。許容高が37〜38mmなら、SHURIKEN 3は公称値で入らないので、Noctuaの2製品からソケットで選びます。
Noctua NH-L9a-AM5(通常ブラウン)|AM5で、許容高37mmから
NH-L9a-AM5は、高さ23mmのヒートシンクに厚さ14mmのファンを重ねて、全高37mmに収めたトップフロー型のクーラーです。幅114×奥行き92mmで、ファンは92×92×14mmのNF-A9x14 PWMを1基備えます。グリスはNT-H1が付属し、メーカー保証は6年、NSPRは61です。
合うのは、AM5のCPUで、ケースの許容高が37mm前後から70mm未満の場合です。AMDのソケットではメモリーにかぶらないので、許容高が低いケースでもメモリーの高さで候補から外れにくい製品です。AM4で使う場合は、ソケットの節で書いたNM-AM4-L9aL9iキットを別途用意します。
見送る条件は、CPUの発熱が大きく、Noctuaの互換情報で余裕が少ないと示される場合です。許容高に余裕があるなら、70mm以上の節の製品も比べてください。
取り違えやすい製品として、AM4用のNH-L9a-AM4と、黒色のchromax版は別の製品です。NM-AM4-L9aL9iはクーラーではなく、取り付け用のキットです。この記事で比べたのは、通常のブラウンの色のAM5版です。
メーカーの資料:NH-L9a-AM5(仕様)/特徴
Noctua NH-L9i-17xx(通常ブラウン)|LGA1700・LGA1851で、許容高37mmから
NH-L9i-17xxは、NH-L9a-AM5と同じく、ヒートシンク23mmとファン14mmで全高37mmに収めたトップフロー型で、LGA1700・LGA1851用です。寸法は高さ37×幅95×奥行き95mm、重さは430g。ファンは92×92×14mmを1基備え、グリスはNT-H1が付属します。メーカー保証は6年、NSPRは59です。
合うのは、LGA1700・LGA1851のCPUで、許容高が37mm前後から70mm未満の場合です。95×95mmの大きさで、LGA1700・LGA1851ではメモリーにかぶらないとNoctuaは説明しています。
見送る条件はNH-L9a-AM5と同じで、Noctuaは発熱の大きいCPU向けではないと注意しています。NSPRも今回のNoctua 5製品で最も低い59です。今回確認した対応ソケットはLGA1700とLGA1851なので、LGA1200やLGA115xのCPUなら、39mm以上が入るケースでSHURIKEN 3か、70mm以上の製品を検討します。
名前に「17xx」の付かない以前のNH-L9iや、黒色のchromax版は別の製品です。
メーカーの資料:NH-L9i-17xx(仕様)/特徴
Scythe SHURIKEN 3(SCSK-3000)|許容高39mm以上で、標準の金具のまま多くのソケットに
SHURIKEN 3は、Scytheのトップフロー型クーラーです。寸法は幅92×高さ39×奥行き94.4mmで、高さはねじの突起を含み、奥行きはファンを含む値です。重さは320g。直径6mmのヒートパイプ4本と、92×92×16mmの4ピンPWMファンを1基備えます。グリス、取り付け金具、日本語の説明書が付属し、保証は1年です。
利点は、標準の金具でAM4・AM5とLGA1851・LGA1700・LGA1200・LGA115X系に対応していることです。LGA1200・LGA115xのCPUで、許容高が39mm以上70mm未満なら、今回の6製品で候補になるのはこの製品だけです。AM4でも、キットを別途用意せずに取り付けられます。
Scytheは、マザーボード上の電源回路(VRM)などにも風を当てるトップフロー構造だと説明しています。どの程度の効果があるか、他の製品より優れているかは、この記事では比べていません。
付属のねじで厚さ25mmのファンに交換することもできますが、その場合は全高が39mmより高くなります。交換後の全高は、ファンの厚さの差を足して自分で決めず、Scytheに確かめてください。
見送る条件は次の3つです。
- ケースの許容高が37〜38mm:公称値で入りません
- 長い保証を重視する:Noctuaの5製品のメーカー保証6年に対して、1年です
- CPUやメモリーとの適合を、注文前にメーカーの公開資料だけで確かめたい:製品ページにCPUの発熱の目安とメモリーの高さの上限が書かれていません(確かめ方は「買う前に確かめる4点」の節に書いています)
名前の似た以前のモデルと取り違えないよう、型番SCSK-3000で選んでください。
メーカーの資料:SHURIKEN 3(SCSK-3000)
許容高70mm以上のNH-L12Sと、77mm以上のNH-L12Sx77:120mmファンの2製品
120mmファンを使う低背の2製品は、必要な許容高が違います。NH-L12Sは70mmから、NH-L12Sx77は77mmから候補に入ります。許容高が70〜76mmならNH-L12Sだけ、77mm以上なら両方を比べます。どちらもファンが大きい分、上から見た面積が広くなるので、ソケットの周りの部品やケースの壁との距離も確かめます。
Noctua NH-L12S(通常ブラウン)|許容高70mm以上、ファンを下に付けた構成を基準に
NH-L12Sは、120×15mmのファンを1基備えたトップフロー型です。全高は、ファンをヒートシンクの下に付けた標準の構成で70mm、幅128×奥行き146mmです。グリスはNT-H1が付属し、メーカー保証は6年、NSPRは88です。
Noctuaは、ファンをヒートシンクの下にも上にも付けられると説明しています。この記事では、全高70mmになる標準の下の構成を基準に比べています(メモリーの目安は前の節のとおり35mmまでで、取り付ける向きで変わります)。
ファンを上に移すとメモリーの空間は広がりますが、全高が増えます。上に付けた場合の全高とメモリーの上限は、Noctuaの現在の仕様ページと製品資料で値が一致しなかったため、この記事では推薦の根拠にしていません。ファンを上に付けて使うつもりなら、自分のケース・マザーボード・メモリーの組み合わせを、Noctuaの互換情報で照合してから選んでください。
合うのは、許容高が70mm以上77mm未満で、メモリーが下に付けた構成の条件に収まる場合です。NSPRは37mmの2製品(59・61)より高い88です。ただし、NoctuaはNH-L12Sについても、発熱の大きいCPU向けではないと注意しています。許容高が77mm以上あるなら、次のNH-L12Sx77も比べてください。
奥行きは146mmと、今回の6製品で最も大きい値です。ソケットの周りの部品やケースの壁との距離を確かめてください。名前の似たNH-L12 Ghost S1は別の製品です。
メーカーの資料:NH-L12S(特徴)/仕様
保証期間には注意が要ります。下の楽天市場の購入先(Joshin楽天市場店)の販売ページでは、2026年10月16日に確認した時点で、同じ商品説明の中に「メーカー保証期間 2年」と「6年間のメーカー保証付き」の両方が書かれていました。どちらがどの条件で適用されるかは、ページからは分かりませんでした。Noctuaの保証規約では6年のメーカー保証とされ、保証を受けるには購入証明が必要です。注文する前に、販売店に保証期間と、保証の問い合わせ窓口を確かめてください。
Noctua NH-L12Sx77(通常ブラウン)|許容高77mm以上で、標準で風を上へ抜く
NH-L12Sx77は、全高77×幅128×奥行き131mmのトップフロー型です。重さは、公式仕様ページでは520g、メーカーの製品資料では540gと記載に差があります。120×15mmのファン1基とヒートパイプ6本を備え、グリスはNT-H2が付属します。メーカー保証は6年、NSPRは100で、今回比べたNoctua 5製品の中で最も高い値です。
標準の構成では、ファンはヒートシンクのフィンの下に付き、風をフィンの下から上へ抜きます。トップフロー型は上から吹き下ろすものと思われがちですが、この製品は標準の構成で上へ排気します。
メモリーの条件は前の節のとおり、標準の向きで44mmまで、ファンを上に付け替えると56mmまでです。ファンを上にすると全高は93mmになるので、背の高いメモリーを使う場合は、93mmが入るかをケースで確かめます。
合うのは、許容高が77mm以上あり、今回比べたNoctua 5製品の中でNSPRが最も高い製品を選びたい場合です。SHURIKEN 3にはNSPRがないので、同じ尺度では比べていません。また、NSPRが高いことは自分の環境での温度を保証するものではないので、CPUの型番でNoctuaの互換情報を確かめてください。見送る条件は、許容高が77mmに届かない場合と、128×131mmの大きさがソケットの周りの部品と干渉する場合です。
NH-L12Sとは別の製品なので、型番の末尾「x77」を確かめて選んでください。
メーカーの資料:NH-L12Sx77(特徴)/仕様
許容高110mm以上なら:小型の塔型Noctua NH-D9L(通常ブラウン)
NH-D9Lは、2つの塔に分かれたヒートシンクに、92×25mmのファンを1基組み合わせたサイドフローのクーラーです。寸法は高さ110×幅95×奥行き95mm、重さは531gで、グリスはNT-H1が付属します。メーカー保証は6年、NSPRは88です。
全高110mmは、ファン1基の標準構成での値です。メモリーの条件は「買う前に確かめる4点」の節のとおりで、多くの環境ではかぶりませんが、AMDのkeep-out zoneを満たしていない一部のマザーボードでは30mm以下が条件になります。
前側にファンを追加することもできますが、追加したファンはメモリーの上にかぶり、そのファンを上げると全高は110mmを超えます。ファンを2基にしても全高を保つ構成では、メモリーの高さが22mm以下という条件になります。許容高に余裕がないケースでは、ファン1基のまま使う前提で選んでください。
合うのは、許容高が110mm以上145mm未満のケースです。塔型なので、ケースの吸気から排気への流れに合わせて取り付ける向きを決めます。向けられる方向はソケットやマザーボードで変わるので、説明書で確かめてください。NSPRはNH-L12Sと同じ88で、NH-L12Sx77(100)よりは低い値です。許容高が110mm以上あっても、メモリーや周りの部品の条件でNH-L12Sx77が合う場合は、そちらとも比べてください。
今回、全高110mm級の小型の塔型として調べた候補は、このNH-D9Lの1製品だけです。この高さの塔型を市場全体で調べたわけではありません。なお、許容高が110〜144mmのケースでも、ここまでに挙げた低い5製品は、ソケットやメモリーの条件が合えば候補に入ります。黒色のchromax版や、名前の似たNH-D9 DX系は別の製品です。
メーカーの資料:NH-D9L(仕様)/特徴
許容高145mm以上が入るなら:塔型の4製品と比べる
ケースの許容高が145mm以上あるなら、空冷CPUクーラー4製品の比較の塔型も候補に入ります。そちらでは、全高145〜168mmの4製品を、ソケット、ケースの高さ、メモリーとの干渉、付属品と保証から比べています。この記事の製品と同じように、ソケット・許容高・メモリーの3つを照合して選んでください。
クーラーを買い替えなくてよい場合
次のような場合は、クーラーを買い替えずに済むことがあります。
- 今のクーラーで、普段の作業の温度に困っていない
- 温度が上がった原因が、ほこりの詰まり、ファンの停止、吸気口・排気口のふさがり、室温など、クーラー以外にありそう
- ヒートシンクとファンが別の部品で、調子が悪いのがファンだけ。ファンだけ外せる作りなら、ファンの交換で済むことがあります。交換するファンは、サイズ・厚さ・固定方法・端子が合うことに加えて、電気的な仕様や、クーラーのメーカーが適合を案内しているかも確かめます。メーカーが交換用のファンを案内していれば、それを優先します
クーラーの交換以外の温度対策は、CPUの温度を下げる方法にまとめています。
注文前の確認
- 型番:ソケットの版(NH-L9a-AM5かAM4版か、NH-L9i-17xxか以前のNH-L9iか)、色(通常のブラウンか黒のchromax版か)、末尾(NH-L12SとNH-L12Sx77)を取り違えていないか
- AM4でNH-L9a-AM5を使うなら、NM-AM4-L9aL9iキットの入手方法を確かめたか
- ケースの許容高の測り方と、クーラーの全高に含まれる範囲を照合したか。ファンの位置を変えるなら、変えた後の全高で照合したか
- メモリーの高さが、その製品・その構成の条件に収まるか
- CPUの型番で互換情報を確かめたか(SHURIKEN 3ならScytheに問い合わせたか)
- 購入ページの対応ソケットと同梱金具の記載に、自分のソケットがあるか。古い在庫の可能性があるなら、型番と同梱品を照合したか
6製品とも、グリスが付属しています。取り付けに失敗して付け直す場合や、後で外して付け直す場合は、古いグリスを拭き取って塗り直します。量と塗り方の考え方はCPUグリスの役割と塗り方の記事で、付け直し用のグリスはCPUグリス3製品の比較で紹介しています。取り付けの手順は、各メーカーの説明書に従ってください。
仕様確認日:2026年10月16日(各メーカーの公式仕様・資料)
